僕は,昨日も仕事で疲れきって,遅くなって家に帰ってきた。
すると,6歳になる娘がドアのところで待っていたのである。
僕は驚いて言った。
「まだ起きていたのか。もう遅いから早く寝なさい」
「パパ。寝る前に聞きたいことがあるんだけど」
「なんだ?」
「パパは,1時間にいくらお金をかせぐの?」
「お前には関係ないことだ」
少しイライラして言った。
「なんだって,そんなこと聞くんだ?」
「どうしても知りたいだけなの。1時間にいくらなの?」
娘は嘆願した。
「あまり給料は良くないさ・・・800円くらいだな。ただし残業代はタダだ」
「わあ」
娘は言った。
「ねえ。パパ。私に200円貸してくれない?」
「なんだって!」
疲れていた僕は激昂した。
「お前が何不自由なく暮らせるためにオレは働いているんだ。」
「それが金が欲しいだなんて。だめだ!早く部屋に行って寝なさい!」
娘は,黙って自分の部屋に行った。
しばらくして,僕は後悔し始めた。
少し厳しく叱りすぎたかもしれない...。
たぶん,娘はどうしても買わなくちゃならないものがあったのだろう。
それに,今まで娘はそんなに何かをねだるってことはしないほうだった・・・
僕は,娘の部屋に行くと,そっとドアを開けた。
「もう,寝ちゃったかい?」
小さな声で言った。
「ううん。パパ」
娘の声がした。少し泣いているようだ。
「今日は長いこと働いていたし,ちょっとイライラしてたんだ・・・
ほら。お前の200円だよ」
娘は,ベットから起きあがって,顔を輝かせた。
「ありがとう。パパ!」
そして,小さな手を枕の下に入れると,数枚の硬貨を取り出した。
僕はちょっとびっくりして言った。
「おいおい。もういくらか持ってるじゃん」
「だって足りなかったんだもん。でも、もう足りたよ」
娘は答えた。
そして,僕があげた200円と自分の硬貨を僕に差しのべて...
「パパ。私,800円持ってるの。」
「これでパパの1時間を買えるよね?」