第4話 「いくえにも」
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2022年9月7日(水)
2日間の1泊ツーリングの帰り際
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激しい雨が
オレとマシンを打ち付け
視界を拒む・・・
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カラス色の
暗黒な
東京名古屋ハイウェイ
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オレは
ひとりで
自分のマシンを走らせていた
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そうなんだ・・・
聞えるんだ
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誰かがオレにささやいてるんだ
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ジェットヘルの中で声が聞こえる
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最初は空耳だとおもった
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でも
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確かに聞こえる・・・
耳をすます
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高くもなく低くもない声だ
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雨や風の音で聞こえづらかったのだが
たしかに
こう
言われた
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「キルスイッチを押せ」
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はっきりと聞こえた
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ジェットヘルの中で鮮明に聞こえた
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怖くなった
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なぜなら・・・
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「ひとつわかったことがある。」
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オレの声だった・・・
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走行中にキルスイッチを押してみたら
どうなるのだろう?
やっぱり
気になる
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エンジンが止まるのはわかる・・・
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そのあとどうなるのか知りたい
先程思った内容だ
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危ないからやめておけ!
どうなるか知りたいだろ?
はやく押せ!
止まったらまたエンジンをかければいい!
絶対だめだ!!!
オフにしたらすぐにオンにすればいい!
危ないことになるぞ!
まわりに走っている車もいないぞ!
余計な事を考えるな!
押してみてから考えろ!
やめろ!!!!!!!!!
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幾重にも2つの意見が交差する
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パチッ
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な
な・・・
何をしたんだ!
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も・・・
もしかして!
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押してしまったのか!?
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「君の手は。」
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現在の時刻
2022年9月6日(火) AM 8:33
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え・・・
・・・
え!
え!!!
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また・・・
また!
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またもや?
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ウソでしょ・・・
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やってしまったのだ
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夢だったのだ・・・
夢の中で走ってきたのだ
なのに疲れていた・・・
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それならそれでいい
・・・
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じゃあ、
オレは
今どこにいるんだ?
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見慣れない部屋・・・
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エアコンが効きすぎていて寒い部屋・・・
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まくらもふとんもオレのじゃない
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いつもと違う・・・
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「チップちょうだいよ~」
と、言ってた
マンボウのおやじの娘が
隣でイビキをかいている・・・
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横綱級のイビキだ・・・
さすがだ
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海の匂いがする女だ
・・・
・・・
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そんなことはどうでもいい・・・
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ここはどこなんだ?
オレは今
何をしているんだ?
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開け方もあまりわからない窓を
そっと開けてみた
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海だ
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海が見える
すぐ近くには線路も見え・・・
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島がたくさん見える
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水族館も見える
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鳥羽一郎が海で泳いでいる
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泳ぎながら
歌っている・・・
曲は
https://www.youtube.com/watch?v=39LrXZCKqW0
娘ではなく・・・
お母様だった・・・
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そんなことは
どうでも
いい
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1泊ツーリングの
2日目の朝だった
・・・
最高な1日がこれから
・・・
始まる
・・・
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(完)